慰め
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白い壁の広い空間で、
イベントホールのような場所。
たくさんのワゴンが並んでいる。
小さなお店もあって、
即席の商店街のような雰囲気。
ほぼ日の生活のたのしみ展、みたいな。
そこでスタッフをしている。
おそろいのエプロンをして。
初日を迎えて緊張しつつ、
持ち場の確認をする。
見たことのある先輩がいて、
心強く思う。
その先輩は、
てきぱきとワゴンに商品を並べている。
ほかのスタッフにも指示を出しているけど、
あたしの仕事はない。
手が出せない。
どうやって手伝っていいのかわからない。
担当一覧のような紙をみつけて、
確認したら、
ほかにも担当の場所があった。
ブッキング?と思うが、行ってみることにする。
ホールの外へ出て、その場所へ向かう。
外は、公園のようなつくりになっていて、
緩やかな斜面に緩やかな階段がある。
その階段に沿って、
小さな建物がいくつか建っている。
登っていくと、また大きな建物があって、
白い建物で、なかにいくつかお店がある。
そのひとつが、担当のお店らしく、
なかに入ってみる。
別のスタッフが、もう準備を始めていて、
遅れてすみませんとあやまる。
お店の主人は、
女優の草笛光子さんみたいな人。
セレクトショップっぽい。
リネンのような素材の商品が並ぶ。
シンプルで洗練された雰囲気。
ただ、お客が来ない。
私の店はいつもこんな感じなのよと、
店の主人は言う。
しばらくして、休憩時間になる。
店の主人は、お店を閉めて、
みんなでお茶をしにいこうと提案する。
外へ出たら、
青空で気持ちいい風が吹いている。
スタッフなのに、何もできていない。
ここにいるだけ。ただいただけ。
きっとこの先も何もできない。
やっぱりどこにも居場所がない気分で、
いつものように無力感だけ持って、
とりあえずみんなについて歩き出すと、
草笛光子さんみたいな店の主人が、
あたしの肩に手を添えて言う。
あなた、
よくがんばってるじゃない。
肩に添えられた手の感触に、
覚えがあった。
ただ、慰められたかったのだと気づく。
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旅行中、志賀高原蓮池の山の駅で、
ランチをしていたら、
お客で来ている、
見知らぬ婦人に声をかけられた。
ちゃむの言葉のことを聞かれた。
本人は言葉を理解しているのか、とか、
本人の言葉は親にはわかるのか、とか。
そして、あたしの肩に手を置いて、
お気の毒に、だったか、
残念ですね、だったか、
夢のことははっきりと覚えているのに、
現実の記憶はすぐに曖昧になってしまうのだけれど、
なんだかそんなようなことを言われた。
見えているもの。
見えていないもの。
その手がずっしり、肩に重かった。
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